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中川どんちゃん祭り

2014年5月欧州、最も美しい村・自然エネルギー 視察旅行報告


2014年5月27日
中川村長 曽我逸郎


欧州、最も美しい村・自然エネルギー 視察旅行報告


 2014年5月8日から19日まで長い休みを頂き、「日本で最も美しい村」連合の企画で欧州に行ってきた。
 前半11日までは、ベルギー・ワロン州の「最も美しい村」連合20周年記念行事に参加し、あわせて同州の「最も美しい村」のいくつかを視察した。記念行事の行われたMozet には、世界連合加盟のフランス、イタリア、カナダ・ケベック州から参加があり、また世界連合への加盟を目指している、スペイン、ルーマニア、ドイツ・ザクセン州、韓国からも参加があった。
 テント・ブースの並びでは、地元ワロン州や各国の加盟村の工芸品やワイン、食べ物が売られ、ステージではルーマニアの民族音楽と踊りなど、さまざまな演目が登場した。

 ひとつひとつのブースの多様な文化をみていると、「最も美しい村」連合という取り組みが、グローバル経済へのアンチテーゼであることを、あらためて感じさせられた。グローバル企業は、自分達の規格に統一した商品、サービスによって世界中のマーケットを席巻しようとしている。それに支配されれば、地域の伝統・文化に根差した商品・サービスは駆逐され、ひいては、地域の伝統・文化、そして、地域の暮らしまで破壊される。「最も美しい村」とは、他にない自分達の伝統・文化・暮らしを大切に守り、未来世代に引き継いでいこうという運動なのだ。

 旅の後半は、ドイツ、オーストリアをまわり、自然エネルギーの取り組みを視察した。
 最初にドイツ、スツッツガルトにオフィスのあるバーデン・ヴルテンベルグ州の環境・気候・エネルギー省で州政府の考えを聞いた。スツッツガルトは、ベンツやポルシェなど、ドイツ自動車産業の中心のひとつ。
 「ドイツではチェルノブイリの記憶が根強く、キノコや野生動物などにはいまだに食べられないものもある。技術力の高い日本でも事故を起こしたのだから、原発は続けられないというコンセンサスができた。それは、市民レベルのみならず、企業レベルでも同様である。
 単に脱原発をして別のエネルギーを模索するだけではなく、エネルギー転換後のエネルギー安定供給の新しい枠組みを作り出すことが重要だ。暮らしの快適性を後退させることはできない。快適性を維持しつつエネルギー供給の新たな仕組みを構築せねばならない。
 経済界が脱原発に抵抗することはない。逆に、企業は次のエネルギー・システムの中において一定の地歩を獲得することを目指し、努力している。次世代システムへの移行は、企業にとって大きなビジネスチャンスだ。
 州内には65〜70の認定されたバイオエネルギー村がある。大きいものでも人口4000〜5000人程度で、ほとんどはもっと小さい村だ。バイオエネルギー事業には、州から初期投資に10〜20万ユーロの助成があり、連邦からの助成も合わせると、初期投資の30〜35%はまかなえる。売電と地域への熱の分配によって、投下費用は10〜15年で回収できる。
 取り組みの主体は、農家、地元住民の組合、企業などであり、行政が運営しているものはほとんどない。
 地域からお金をできるだけ外に流出させないこと。エネルギーに関しても、アラブやロシアへ流出させるのではなく、地域の中でお金が循環するようにしていくことが大切だ。」

 スツッツガルトの後、ドイツ、オーストリアの村々をまわった。訪れたのは、ドイツの St.Peter、Kirchberg an Jagst、Merkendorf、Rettenbach、オーストリア Güssing である。
温水を配る埋設パイプ
温水を配る埋設パイプ
 全体に共通していたのは、地域内に張り巡らした温水循環パイプで家庭、公共施設、工場などに熱を供給する仕組みだ。課金は、利用者宅・施設に流入する温水と出てくる温水の温度差、流水量をモニターし、どれだけの熱がそこで消費されたかを算出して行う。循環パイプは、直径15cm ほどで、この中に断熱材と2本のパイプが入っている。



 熱源は、一番小規模でシンプルな仕組みでは薪を燃やすもの(Rettenbach)で、少し高度化すると、木材をチップにしてボイラーに自動供給するものもある。さらに進んだ仕組みは、バイオガス(メタン)でエンジンを回して発電し、それを売電し、同時に、エンジンは冷やさねばならないから、水冷して出てくる熱水を地域に循環させる、というものだ。つまり、発電と熱の供給との両方を行うコジェネである。
 バイオガスの発生源はさまざまで、畜産農家が単独で牛豚の糞尿を発酵させ、売電と周辺への熱の販売を副業として行っているケース(Kirchberg)もあった。とうもろこしなど植物も使われる。Güssing ではアザミに似た専用植物を育てて収穫し、野積みして、年間とおして少しずつ発酵槽に投入していた。最も大がかりなものは、Güssing でみた、木材チップに高温の砂を吹き込み、燃やさずにガス化するという仕組み。これは、生ごみやプラスチックなどのごみも同様にガス化して発電と熱供給に使うことができ、タイやドバイで採用が検討されているという。(但し、オーストリアでは法律上の制約があり、Güssing では木材チップだけをガス化している。)バイオエネルギーをガスとして取り出すだけでなく、液体燃料に加工する方法も研究されていた。
 木材燃焼後の灰やバイオガス生成後に残る堆肥、炭は、ミネラルが多く含まれるので肥料として優れており、農地に還元している。

 温水循環による熱供給については、ヨーロッパではほとんどの建物の窓の下に温水パネルヒータが取り付けられているので、そのシステムにつなぐだけで利用できるのだろう。利用しやすいインフラが既にあったという点は、日本とは異なる。温水循環の仕組みをそのまま日本に移植するのは難しいかもしれない。
 しかし、痛感したのは、脱原発とか、自然エネルギーとか、掛け声倒れの精神論に終わらず、実効性のある技術の開発が着々と蓄積され、システムに組み上げられていることだ。
 そして、州環境省の説明にあったとおり、自治体による取り組みはほとんどなく、地域住民の組合や単独の農家が頑張っている。それが可能であることの背景には、第一に住民の意識の高さと頑張り、そして、おそらく、個々の条件を調査、分析し、それに応じた最適なシステムを選出し、その採算性、経済持続性を算定し、トータルにアドバイスできる技術者の存在があるのではないかと思う。
 基礎自治体の任務は、日本と比べてかなり限定的であるようで、職員の数も少ない(Rettenbachでは役場職員は1名のみ)。自治体が地域エネルギーシステムを管理運営するという発想は、今回訪れた村々では、ほとんどないように感じた。
 薪の調達は住民からの購入とし、その支払いは地域通貨をもってしている村もあった(Rettenbach)。
 再生可能エネルギーの自給に向けた努力も、地域を経済的に自立自存させ、地域の個性を大切に残したまま持続可能な村にしていこうとするものだと感じた。「最も美しい村」連合の思想と共通する。
 自分達の伝統・文化と暮らしを守り、将来世代へ引き継いでいきたいという村々の、いうなれば極めて保守的なこだわりが、グローバル資本主義へのレジスタンスとなり、よりよい未来を切り開く革命をもたらそうとしている。それが、「最も美しい村」であり、再生可能エネルギー地域自給の取り組みだ。国家においてはグローバル資本主義におもねる傾向が強いが、世界の村々は、土着の文化を堅持する「本来の正統な保守」の精神によって、それに対抗するのである。

 それぞれの村の状況は、以下のとおり。ハードスケジュールで疲弊した中での、通訳の方を介した走り書きのメモなので、自分で読み返しても整合性のない部分があり、細部には誤解や混同があるかもしれない。ご容赦願いたい。
 それぞれの村で、村長、そして自然エネルギーに取り組むキイパーソンの皆さんが丁寧な対応をして下さった。ドイツに同行してくれた Dr. Tilo Schmid-Sehl さん、通訳の方々、ハードスケジュールの工程をこなしてくれた運転手さん、連合の旅の仲間、そして誰より連合事務局の皆さんに感謝する。
 おいおい写真も追加掲出していく。
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St.Peterの建屋。この中にペレットガス化コジェネ設備、チップボイラ等が
St.Peterの建屋。この中にペレットガス化コジェネ設備、チップボイラ等が
◆ St.Peter
 ドイツ南西部。フライブルグに近い「黒い森」の中の村。標高520〜1220m。人口2550人。3600ha。
 電力は700万kwh/年 を必要としているが、その3倍の2100kwh/年 を発電している。太陽光で118万(各家庭が主)、水力3施設で40万(民間)、風力6施設で1840万(民間?)、木材140万。
ペレットをガス化して発電し温水をつくる装置
ペレットをガス化して発電し温水をつくる装置
 木材によるものが、今回訪れた地元の組合によるもので、電力の他に8100メガワット時の熱も供給している(村の熱の必要量は12000メガワット時)。
 組合メンバーは、当初の82人から現在は230人。内195名がエネルギー源を提供し熱の供給を受ける林業者や農業者で、35人は出資のみのメンバー。エネルギー源を提供し熱を消費する人たちから€33万、投資メンバーから€37万を集め、合計の自己資金は€70万。借入が€390万。州政府から€20万。投資額は€560万。(合計が合わないが、差額は国からの支援か?)
 中心メンバーは、当初2人で現在は5人。経理・財務はアウトソーシングしている。
木材チップを燃料にするボイラー
木材チップを燃料にするボイラー
 熱供給の配管延長は、幹線部が5200m、引き込み線の合計が4800m。195世帯に供給している。生産熱量は年間9400メガワット時でロスは13%。
 木材ペレットをガス化してエンジンを回して発電し(180〜190kw)、同時に温水を作る(260kw)のをベースロードとしている。熱が不足の時は、木材チップを燃やす。それでも不足する日が年に10〜15日あり、その際は石油も使う。

 灯油85万ℓが不要になった。木材ペレットは、8000㎥、900t使う。

◆ Kirchberg an Jagst
 芸術家の移り住む素敵な美しい村。
 畜産農家が、単独でバイオガスシステムを導入し、売電と周辺への熱の販売を行っているのを見学。

 “The 4th Revolution - Energy Autonomy” の監督、Carl-A. Fechner 氏から、次の作品 “CHANGE! Ein Deutsches Energiemärchen” の話を聞いた。“The 4th Revolution” のDVDを頂き、大勢で観て欲しいとのことだったので、希望があれば連絡を。
中央奥こちら向きがフェヒナー監督
中央奥こちら向きがフェヒナー監督


◆ Merkendorf
 壁で囲まれた古いエリアを中心とする村。かつてはキャベツの一大産地として有名。第2次大戦終末期に立てこもったナチ親衛隊と米軍との間で激烈な戦闘があったという。
木チップボイラーの建屋。左奥がチップ置場。ベルトコンベアで自動供給される。
木チップボイラーの建屋。左奥がチップ置場。ベルトコンベアで自動供給される。
木質チップボイラー
木質チップボイラー
 郊外に「エネルギーパーク」(太陽光発電など自然エネルギー関連企業の集積する工業団地)を造成し、400人の雇用が生まれている。
 家畜の糞尿やトウモロコシなどを発酵させてバイオガスを生成しエンジンを回して電力と熱供給を行うシステムを提供する会社を訪問。規模にもよるが数億円の投資になる。だが、日本の場合、バイオガスによる電力は買い取り価格が高いので、1〜1.5年で回収できるのではないか、との発言があった。
 農業大学で、バイオガスによる発電+熱供給、木材チップボイラーによる熱供給を見学。


◆ Rettenbach
 つい先日まで村長だった Fischer 氏の説明では、近隣の町と一旦合併し、それを解消した経緯があるとのこと。「自治体合併して学校などを統合し、余った施設を民間に売るように」との(州政府の?)方針によって近隣と合併したが、村は魅力を失い観光客が激減、人口も1/3が流出した。さかんだった文化・スポーツ活動も沈滞し、生活の質が低下した。そこで、Fischer 氏ら危機感を持った5人の農家の若者が政治活動を開始し、合併自治体で4人が議席を得た。しかし、提案のほとんどは採択されず、また一旦成立した合併を解消する法制度もなかった。バイエルン州議会に5年間にわたり働きかけ、ようやく合併離脱の法整備を実現させた。

役場内部。職員は奥で机に向かっている女性一人だけ
役場内部。職員は奥で机に向かっている女性一人だけ

 合併解消後は、住民の主体的な参画を呼び起こし、自治、産業振興、自然エネルギーの自給に成果を上げている。地域に必要な施設は、みんなで知恵を出し合ってデザインし、みんなで建設する。地域外への外注はなるべくおこなわない。村役場の職員は女性一人。人口は805人。

薪ボイラー
薪ボイラー

 太陽光発電やバイオガス、ナタネ油によるコジェネを行ってきた。ナタネ油スタンドは最高120万ℓを販売し、大変好調だったが、圧力を受けて税金を上げられ、うまくいかなくなった。
 地域の若者を勇気づけ創業を導き、芝刈りや融雪剤散布、ゴミ収集などの特殊作業車両を開発製造する会社など、成功事例が数社生まれている。


薪ボイラーの薪投入口を開けたところ。
薪ボイラーの薪投入口を開けたところ。

 一階は地域のニーズにこたえるスーパーマーケットと、コミュニケーションの場である喫茶店、2階が住民が使えるフリースペースとなっている村の中心の建物もみんなで建てた。その地下には、薪ボイラー(少し大きめの事務机位の大きさ)があり、これ一台で、この建物と、道路を挟んだ町役場(2階は楽団の練習場)、その隣の幼稚園への暖房と熱供給を行っている。ボイラーに投入した薪は下から燃えていくので、冬の寒い日でも1日に2〜3回、夏なら2日に一度くらいまとめて投入すればよく、手間はかからない。薪は、住民から買いとっており、支払いは地域通貨で行っている。

◆ Güssing

バイオガス生成の原料となるアザミに似た草
バイオガス生成の原料となるアザミに似た草

 ハンガリーとの国境の村。かつては強大なオーストリア=ハンガリー帝国の一部であったが、帝国は第1次大戦によって多くの国に分裂。この地域では、農村部のドイツ語を話す人々がオーストリア編入を望み、都市部に住むハンガリー語を話す人たちはハンガリー残留を望んだ。そのため、Güssing を含むこの地域は、都市的インフラの乏しいオーストリアで最も貧しい地域になった。小規模農家が多く、交通インフラも悪くて70%が出稼ぎに出ていたし、南北アメリカへの移民も多かった。東西対立のため、ハンガリーとの交流もできなかった。
 エネルギーを大きな要因として地域のお金が流出していたので、それを止めるため、まず断熱、次にバイオマスと太陽光による発電をおこない、今は人工天然ガス(SNG)と液体燃料の製造に取り組んでいる。

バイオガス生成の原料となる草を積んでおく所。3列あった。
バイオガス生成の原料となる草を積んでおく所。3列あった。

 Güssing のエネルギー需要は、熱は年間60Gwh で世帯需要はその半分。電気は、50.2Gwh で、内世帯分が8Gwh、産業部門が38.4Gwh。燃料が29(21?)Gwh。熱の生産は50Mkwhなので80%の自給率。電気の生産は32Mkwhなので自給率200%(ここは計算が合わない。私のメモが間違っていると思う。)

この中で草を発酵させてバイオガスをつくる。ガスで片方の上部は膨らんでいる。
この中で草を発酵させてバイオガスをつくる。ガスで片方の上部は膨らんでいる。

 畑に育てた植物によるバイオガス施設も見学した。アザミに似た植物で年間に1100tを発酵させ、200万立方メートルのバイオガスを生み出す。バイオガスでエンジンを回し、1200世帯分の電気をつくりだし、55世帯に熱を供給している。バイオガスは液体燃料化も可能で、残った堆肥は農地に戻す。

草から作ったメタンガスで発電し、同時に温水をつくるディーゼルエンジン
草から作ったメタンガスで発電し、同時に温水をつくるディーゼルエンジン
 さらに大がかりな施設は、木材チップからSNGをとりだすプラントである。木材チップに高温(850℃以上)に熱した砂を吹き込み、燃焼させずにガスを取り出す。この設備は、木材チップだけでなく、生ゴミやプラスチックなどもガス化することが可能だそうで、ドバイやタイが、ゴミの処理とエネルギー化の手段として検討しているという。実際、見た目もガス化溶融炉などのゴミ焼却施設に似ており、コンピュータ制御画面もそれに似たチャート図で構成されていた。1tの木材チップから、420kwhの熱と182N㎥のSNGが取り出せる。今回の視察でみた他の施設は、無人で稼働していたが、この施設のみ交代で24時間一名が常駐するという。
草によるバイオガス発電・温水施設で補完的に使われる木質チップ
草によるバイオガス発電・温水施設で補完的に使われる木質チップ
木のチップをガス化する装置。かなり大がかり
木のチップをガス化する装置。かなり大がかり


以上